生活

食べ物で遊ぼう

限界の夜に見たライブの話


人生において限界が迎える頃って何回かありますよね


僕の場合 1回目は無職のまま大学を卒業し、親には就活するフリをして友人の家を転々としていた時、


あの時は、漠然とした不安で毎日心臓を鷲掴みされゆっくり潰されては戻しゆっくり潰されては戻しを繰り返すような辛さがあったのですが

そこから色々あって2年間めちゃくちゃ勉強してようやくなりたい職業に就職が決まりました。号泣しながら親に産んでくれてありがとうと感謝したものです。



2回目はそこに就職してから半年後でした、


想像してた世界とはあまりに違ったこと 自分がこんなクソみたいな仕事のために2年間も死ぬほど勉強頑張っていた現実


辞めたら辞めたでその2年間が本当に意味がなかったことになること、嫌々続けたとしてもこの緩やかな嫌々が今後40年近く続いて死ぬだけ


無職の時とはまた違う先の見えない漠然な不安で声にもならない嗚咽と涙が止まらなかった。 



仕事の昼休み中は一番奥の個室トイレで「仕事 辞め方」「自殺 痛くない」「不知火舞 エロ」で検索しては喫煙所でタバコを吸いを繰り返して時間を潰していました。

f:id:otibi111:20200708225415j:plain





今回はそんな2回目の限界を迎えていたある夜にフラっと見たバンドの話です


僕はライブハウスという場所の空気がとても好きであそこに集まる人たちは若い人から結構な歳いった人まで老若男女がいるんですけど

ひとつだけ統一されてるのが全員が全員目が死んでいること 


あそこにいる人たちは初対面でわかる何か社会で生き辛いんだろうなって人が集まるそんな浮いた空気が自分の居場所のような気がしてとても好きでした


少し気になっているバンドのライブが近場であると適当に買って行ってたりしたんですね


その日見たのは5人組の30代後半で構成されたYellow studsというバンドでしたその風貌はバンドマンとして夢を追うという姿としてはもう決して若くない 


一言で言うのであれば「痛い」それがしっくりくる風貌だったのをとても覚えています。 
彼らは何というか不器用そのものでした。



ていうかみて下さいよこのアー写

f:id:otibi111:20200708224900j:plain


5人中4人が髭ロン毛パーマですよ? バンドに一人いりゃいい髭ロンパー枠が8割を占めてるんですよ?


麦わら海賊団でいったらサンジ4人ゾロ1ぐらいの構成 毎日ご飯が美味しそうだね 海出る前に終わるわ即打ち切りだよ 


ある意味統一性があるといえばあるのか 兎にも角にも不器用過ぎたんだ


ただ演奏が始まってから 気付くと鳥肌が止まらなかった


最初は声とかチバユウスケに似てるし渋くてカッコええやんと思っていたが全然違った



特に印象に残っている曲がある


「さえずり」

彼らの曲はあまりにも捻くれてそれでいてとても真っ直ぐだった


ピアノとともに出てくる言葉は音の軽快さとは裏腹にあまりにも心の奥底からでてくるドス黒いダークマターの産物だった



若い頃は勢いでやっていたが気付いたら自分達しか残っていなかったこと、若い頃は言葉が溢れ出したが今ではボールペンも重く才能みたいなものは枯れ尽きていること 


そもそも「誰でもいいから 俺を褒めてくれ」 こんなことチバユウスケは絶対言わない  


前髪で目を隠したマッシュのガキが語る愛とか絆とか安っぽい比喩表現なんて一切ない 純粋に真っ直ぐ腐った姿が吐く一言 一言には彼らにしか出せない独特の重みがあった。



彼らの曲を聴いているとあまりの真っ直ぐさにこっちまで心がやられる


MCに至っては 最近服用している精神薬のこと、ツイッターのフォロワーが増えないこととかをつらつらと語っていた。チバユウスケは絶対こんなこと言わない



このボーカルは絶対精神がイッている


「夜空に願いを」


私がYellow studsで最も好きな曲です
ボーカルが鬱病の時に自殺する場所を探していた時の曲



あまりにもあまりにも辛い どうにもならない現実が訳もわからず何かに祈る様が漠然としに場所を探していた今の自分と重なってしまった 


「何もしなくてもいい 前を向けているのなら 恐れててもいい 迷っててもいい 人としてもがいているのならば」


ここの部分を聞いた瞬間泣いてしまった



こんなにも優しい言葉があるだろうか 

限界だった自分に対してこれ以上の言葉はなかった 

生きているだけでいい ただそれだけの言葉だ 

ただ、ただ、彼らが言うそれはあまりにも重さが違った

今でも夜この曲を聴くと泣きそうになる瞬間がある




彼らが一番最後に必ずやる代表曲がある



「バード」

最後のトリだけにバードってかというおっさんバンドの最高によくないところが出ているのですが


この曲から彼らの叫びがひしひしと伝わってくる


「気がついたらこんな場所に立っていたんだ、学歴も資格も持っちゃいねえよ」


この曲はもう13年前からやっている曲らしいが歳を増すごとに以前から変わらない歌詞の重みがケタ違いに増していく


「まだまだいけるぜ」そう叫びスポットライトに照らされた彼らの姿にはどこかカラ元気みたいなものと切なさが詰まっていた


全ての曲が終わり、ただ放心状態の中 帰り道 隣の駐車場でタバコをふかしながら 今でも覚えていることがあるなんとなく死にたいがYellow studsが解散したら死ぬかぐらいに変わったことを。


今死にたいと思っている人は是非聞いてくれ! そんな恩着せがましいことは言わない


ただなんとなく 今なんとなく生きてる人 


そんな人に聞いてもらえたらなって 


俺も今なんとなく生きてるから。